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【生命科学科】 稲垣教授の論文が、Nutrientsに掲載されました

印刷用ページを表示する 掲載日:2019年11月5日更新

稲垣教授の論文が、Nutrientsに掲載されました。先日に続き、Nutrientsに掲載された論文となります。

 

Arita S, Ogawa T, Murakami Y, Kinoshita Y, Okazaki M, Inagaki-Ohara K

Dietary Fat-Accelerating Leptin Signaling Promotes Protumorigenic Gastric Environment in Mice.  Nutrients 11(9). pii: E2127, 2019


以下概要です。 

   普段私たちは、様々な脂肪を食事から採っています。しかし、脂肪をたくさん摂り続けると肥満になります。現在、肥満は胃がんを含む様々な組織の発がんの危険因子であると言われています。稲垣教授はこれまでに、ラード(豚脂)は体重が増え、胃の前がん症状である腸上皮化生(胃粘膜が腸粘膜の性質に変化してしまう症状)を起こすことをすでに発表していましたが(Inagaki-Ohara, Nutr&Metab, 2016, Arita & Kinoshita, Arch Biochem Biophys, 2016、今回の論文では、ラード以外の他の脂質では、胃粘膜にどのような影響を与えるのかと考え実験しました。7種類の脂質(ラード、牛脂、硬化やし油、アマニ油、オリーブ油、コーン油、ココアバター)の高脂肪食をマウスに3か月間与え、前がん症状を起こすか調べました。その結果、ラード、牛脂、硬化やし油は肥満になり胃酸酸性細胞の著しい減少はじめ腸上皮化生を起こしますが、オリーブ油やコーン油は体重が増えても腸上皮化生を起こしません。大豆油は肥満にならず腸上皮化生も起こしませんが、アマニ油は肥満にはなりませんが腸上皮化生を起こしました。またココアバターは、通常食を摂取したマウスよりも体重が減りしかも腸上皮化生を起こしませんでした。そして、腸上皮化生を起こす脂肪は、胃レプチンの産生を高めるという共通点がありました(図1、2)。さらに胃内細菌叢の変化を調べたところ、腸上皮化生を起こさない油脂でLactobacillus属を優占とした細菌数増加が認められ、細菌叢の構成の乱れ(dysbiosis:ディスバイオーシス)が起きる傾向にありました(図3)。このように同じカロリーの食事を同じ位の量を摂取しても、胃に優しい油とそうでない油があることを見つけました(表1)。また、細菌叢の数や構成の乱れは、炎症・発がんの促進に重要だと考えられてきましたが、本研究の結果から、必ずしも細菌叢のdysbiosisが病態発生に繋がるわけではないことが示唆されました。これらの結果は、世界中で増え続ける肥満と発がんの予防や機能性脂質食品の開発にも繋がる可能性があり、極めて重要な発見です。

   この論文は、この3月に大学院を修了した有田晟哉君、2年前に卒業した木下裕太君が精力的に進めてくれました。その結果を今年の3年生(小川拓実君、村上祐太君、岡崎雅治君がしっかり引き継ぎ追試を行い、論文発表に繋がりました。生体防御学研究室の得意技「学生リレーの論文発表」です(図5)。

 
論文図1

図1. 各種高脂肪食摂取時の体重増加と食事摂取量の変化。C57BL/6Jマウスに脂肪カロリー比60%の高脂肪食あるいはコントロール食を摂食させた。(A)体重増加量、(B)食事摂取量。各高脂肪食群で食事摂取量にほとんど差はないが、体重増加量は、肥満あり、肥満なし、痩身に分類される。

論文図2

図2. 各種高脂肪食摂取時の胃粘膜病理像と胃レプチン発現の関連性。実験食を3か月間与えた時のマウス胃粘膜組織像。(A)ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色、胃酸産生細胞(壁細胞)のマーカータンパクであるH+K+ATPaseの免疫染色像。Group 1では、HE染色像で、腸管クリプト様に変化している部分が顕著に認められ、その部位でH+K+ATPaseの発現が著減しており、胃酸産生細胞が著減している。(B)胃レプチンの発現を誘導する高脂肪食群では炎症や腸上皮化生の程度が強い(病理スコアが高い)。

論文図3

図3. 胃内細菌叢の解析。16S rRNA遺伝子を標的とした菌群・菌種特異的プライマーを用いた定量的PCRを行った。コントロール食と比較し、Group 1、2群では細菌数はそれほど変化がない。Group 3、4、5群ではLactobacillus属が優占で、細菌数も増加している。

表1. 肥満と腸上皮化生形成の分類。肥満が必ずしも腸上皮化生を誘導するとは限らない。

表1
論文図5

図5. 本論文の共著者。卒業生(上図:手前から有田晟哉君、木下裕太君)、2019年度3年生(下図:左から小川拓実君、岡崎雅治君、村上祐太君)。3年生は油ものが大好きである。


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